ヒトが糖質や脂質をエネルギーに変える仕組み

はじめに

トライアスリート管理栄養士のTDです。

前回は、ヒトのエネルギー源とその貯蔵庫について解説しました。

今回糖質や脂質、タンパク質ってどんな仕組みでエネルギーになるの?って話です。

すこし複雑ですが、図も見ながら少しずつ理解していきましょう!

エネルギーを作る仕組み ~エネルギー代謝経路~

まずはエネルギー代謝経路の概要について。

エネルギーを作る仕組みで重要なものは以下の3つです。

・クレアチンリン酸経路
・解糖系
・有酸素系

各経路には、エネルギーを作る速さや経路が動く持続時間などの違いがあります。

マラソンでは脂肪が良く燃える!とか
短い時間の運動では糖質がたくさん使われる!とか聞いたことありませんか?

運動ごとに消費するエネルギー源が変わるのは、
運動の強度や実施時間によってメインで動く代謝経路が異なっているからなんです。

ではそれぞれの代謝経路の仕組みと特徴を見ていきましょう。

超爆速のエネルギー経路 ~クレアチンリン酸系(PCr系)~

この経路は糖質でも脂質でもない物質からエネルギーを作る経路で、
クレアチンリン酸(PCr)という物質を使います。

サプリメントの「クレアチン」を摂取している方は多いのではないでしょうか?

僕らの筋肉の中にはPCrが含まれています。

このPCrを分解するとクレアチン(Cr)とリン酸(P)という物質ができるのですが、分解時にいっしょにエネルギーができます。

このPCr系、エネルギーができるまでの過程がすごく短いので、爆速でエネルギーができます(解糖系、有酸素系と比べて)。

だから運動開始直後はこの経路が動き出してエネルギーを作り出します。

また、超高負荷の筋トレのように一気にたくさんのエネルギーが必要な時は、短時間でエネルギーを作らなきゃいけないのでこの経路が動きます。

ただこの経路は持続時間がめちゃくちゃ短いのが弱点です。
筋肉の中にあるPCrの量って少ないのです。だから数秒程度しか持ちません。

ちなみに休憩すると、クレアチンからクレアチンリン酸を再合成して回復します。

ヒトの身体ってうまくできていますね。

無酸素の糖質利用 ~解糖系~

図2_解糖系の概要図

続いての経路は解糖系。

この経路は糖質であるブドウ糖を分解する過程でエネルギーを作り出す経路です。
反応に酸素を必要としないので、無酸素性のエネルギー代謝経路といわれています。

解糖系では血液の中の糖質(血糖)や貯蔵庫内の糖質(グリコーゲン)を、
ピルビン酸という物質まで変換してます。

詳しい反応については省きますが、糖質→ピルビン酸までの過程でエネルギーができます。

ピルビン酸になった後は運動強度の違いによって進むルートが変わります。

・運動強度が低いとき→有酸素性エネルギー代謝ルート
・運動強度が高いとき→乳酸に変換(乳酸性)

なぜ運動強度によって変わるのか?

その理由は、ヒトのピルビン酸を処理する能力に関係しています。

運動強度が高くなると解糖系がめちゃたくさん動くので、
その分ピルビン酸がたくさんできるんですね。

できたピルビン酸はそのままにせずに処理されるわけなんですが、
たくさんありすぎると有酸素性ルートでは処理しきれないので、乳酸ルートに進むといわれています。

解糖系(乳酸性)は、有酸素性に比べてエネルギー作りにかかる時間も短いので、
短時間でたくさんのエネルギーを作ることができます。

でも、持続時間が30秒程度と短めなのが欠点。

ダッシュなどをするときは短時間でたくさんのエネルギーが必要なのでこの解糖系がたくさん動きます。ただ、持続時間が短いので、ダッシュのスピードではマラソンは走り切れないわけです。

インターバル走の時とかは、「あーいまめっちゃ解糖系」って妄想するようにしましょう。

超持続のエネルギー経路 ~有酸素系~

図3_有酸素性の概要図

最後は有酸素系のエネルギー経路です。

文字通りエネルギーをつくるために酸素が必要になる経路ですね。

まず有酸素系でエネルギーを作るためには「アセチルCoA」と「オキサロ酢酸」という物質が必要です。

アセチルCoAは先ほど解説したピルビン酸や、脂質などから作ることができます。
オキサロ酢酸は有酸素系反応の中でも作られますが、糖質からも作られます。

また、運動の最初の方は糖質からアセチルCoAが多く作られますが、
糖質よりも脂質を分解したほうが大量のアセチルCoAを作れるので、徐々に脂質の分解量が多くなっていきます。

これが有酸素運動では脂質がたくさん燃えるといわれる理由です。

有酸素系では、このアセチルCoAとオキサロ酢酸を「TCA回路」と「電子伝達系」という仕組みでなんやかんや反応を起こしてたくさんのエネルギーを作り出します。

この有酸素系はエネルギーを作るまでのスピードこそ遅い(PCr系と解糖系と比較して)ですが、
必要な材料があれば長時間維持することができます。

なので短時間で大量のエネルギーを必要とする高強度運動ではあまり活躍できませんが、
低強度長時間の運動では、ゆるゆると大量のエネルギーを作り続けることができるんですね。

ロングライドしてるときは「いますげえ有酸素系動いてるわー」って妄想しましょう。

まとめ

図4_エネルギー代謝経路まとめ

エネルギー代謝経路について、なんとなーく理解できたでしょうか?

え?タンパク質はどこいったのかって?

実はタンパク質はアミノ酸に分解された後に、この解糖系や有酸素系の中に入り込んで、
糖質や脂質と同じようにエネルギーに変えられます。

まぁメインは糖質と脂質なのですが。

さて今回覚えてほしいものは以下の通り!

・エネルギーをつくる仕組みは以下の3種類
 - クレアチンリン酸系(PCr系)
  →無酸素系
  →材料はクレアチンリン酸
  →超爆速でエネルギーを作れるけど数秒しか持たない

 - 解糖系
  →無酸素系
  →主な材料は糖質
  →速くエネルギーを作れるけど数十秒しか持たない
  →高負荷運動では乳酸ができて、低負荷運動では有酸素系エネルギー経路につながる

 - 有酸素系
  →有酸素系
  →主な材料は糖質と脂質
  →エネルギーができるスピードは遅いけど、材料があれば長時間持続する。

少し難しかったかもしれませんが、エネルギーを理解するためにはとても重要な内容ですので、しっかり覚えてくださいね!

次回はこのエネルギー代謝経路と運動強度や時間との関係について解説します!

おまけ ~有酸素運動時にもなぜ糖質が必要なのか?~

有酸素運動にもなぜ糖質が必要なのか?

有酸素系では脂肪を使ってゆるゆるとたくさんのエネルギーを作れます。
身体の中には大量の脂肪があるので、こいつを使ってずっとエネルギーを作ることができます。

ただこれを聞くと少し疑問が浮かんでくるんですね。

脂肪が大量にあるなら、糖質なんて補給しなくていいじゃないかって思いませんか?

確かに長時間のトレーニングになると脂肪が使われるのなら、糖質なんていらんって思いますよね。

この疑問を解決するために重要なのが、
TCA回路のスタート地点である「アセチルCoA」と「オキサロ酢酸」合わさるところです(図3)。

この反応を起こすためには、アセチルCoA1つに対してオキサロ酢酸も1つなければいけません。

まずアセチルCoAに関しては、糖質からも脂質からも供給されます。

前述しましたが、アセチルCoAの供給源は運動時間が増えていくと糖質から脂質に代わっていきます。
しかも脂肪から作られるアセチルCoAはめちゃくちゃ多いです。

ただオキサロ酢酸に関しては、ピルビン酸から作られるかTCA回路の反応が進むことで出来るので、
アセチルCoAのように脂肪から大量に供給できるわけではないんです。
なので、オキサロ酢酸のメイン供給源は糖質ってことになります。

糖質の供給を止めてしまうとアセチルCoA+オキサロ酢酸の反応を起こせなくなってしまうので、
有酸素系経路を維持できなくなってしまうんです。

このように有酸素系を動かすためには脂質と糖質のどちらも必要で、
脂質は身体に大量にあるけど、糖質の量は少ないのでレース中に補給する必要があります。

なんとなく理解できたでしょうか?

ヒトの身体っておもしろいですねー

トライアスリート管理栄養士 TD

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