体内のアミノ酸の行方

はじめに

トライアスリート管理栄養士のTDです。

タンパク質編第2回では、
口から食べたタンパク質がどのように消化・吸収されるかについて解説しました。

今回は、身体の中に供給されたアミノ酸がどんな動きをするのかを見ていきましょう。

アミノ酸の在庫を一定に保つシステム ~アミノ酸プール~

図1_アミノ酸は肝臓を経由して全身に運ばれる

アミノ酸の動きを理解するために、
まずは体内のアミノ酸在庫を管理する仕組みについて知っておきましょう。(図1)

小腸(空腸)を経由して体内に入ったアミノ酸は血管を通って肝臓に到達し、
その後全身へ運ばれます。

全身のアミノ酸は筋肉の合成などの様々な用途に使われるわけですが、
ただひたすらにアミノ酸を消費しているわけではなく、
しっかりと在庫管理をしながらアミノ酸を使っています

頭の中にアミノ酸という材料がたくさん入っている倉庫をイメージしてみてください。

アミノ酸を使うときは倉庫の中から必要な分だけ取り出して使い、
倉庫の中のアミノ酸が減ってきたら在庫を補充しています。

この倉庫のことをアミノ酸プール」といい、
僕らの身体はアミノ酸プール内のアミノ酸の在庫数が常に一定になるように管理をしているのです。

ではアミノ酸プールについて理解したところで、
アミノ酸の用途について、在庫の消費する動きと補充する動きに分けてみていきましょう。

アミノ酸の在庫を消費する動き

図2_アミノ酸の在庫を消費する動き(全体像)

まずはアミノ酸の在庫を消費する動きについて。(図2)

脂肪をつくる ~在庫が過剰の時の動き~

タンパク質を過剰に摂取して体内のアミノ酸在庫が増えすぎると、
アミノ酸を脂肪に変換して体脂肪という別の保管庫に貯蔵するようになります。

ダイエットの時にやりだまに挙げられるのは糖質や脂質がほとんどですが、タンパク質も過剰に摂りすぎると脂肪になるので注意しましょう。

糖質をつくる ~低血糖の時~

糖質は身体の中では非常に重要なエネルギー源です。
身体の中の糖質が少なくなると、低血糖を引き起こし、最悪死に至ります。

簡単に死んでしまってはまずいってことで、
ヒトには糖質が少なくなったときに別の物質から糖質を作る仕組みが備わっています。

緊急対応ですね。

糖質を作るために使われる材料は色々あるんですが、アミノ酸もその一つです。
体内の倉庫からアミノ酸を取り出して糖質を作りだします

無駄にアミノ酸を消費しないためにも、
低血糖状態にならないように気を付けた方がよいですね。

運動時のエネルギーなど、いろんなものに変換される

アミノ酸が変換されるのは糖質や脂質だけではありません。

例えば運動中のエネルギーにもなりますし、
他にもトリプトファンっていうアミノ酸はセロトニンっていうものになったりします。

詳しくは割愛しますが、いろんなものに使われるんだなー程度に覚えておいてください。

また、アミノ酸を脂質や糖質などに変換するときは、
形を組み替える際に不要な部分がゴミとして出てきます

このゴミは最終的に無毒なものに代謝されて、尿から排泄されます。

腎臓病の人はこの排泄機能が落ちているので、タンパク質制限食になったりします。

頭の片隅にでもおいておきましょう。

アミノ酸の在庫を補充する動き

次は体内のアミノ酸在庫を増やす働きですが、
皆さんご存じの通り「食事」があります。

口から食べたタンパク質をアミノ酸として吸収して、体内のアミノ酸プールに在庫補充をします。

アミノ酸の在庫を一定に維持する仕組み ~タンパク質の合成・分解~

図3_アミノ酸の在庫を一定にする仕組み

前述した通り、アミノ酸を補充するためには食事が必要です。

しかしここで気になる点が。

食事を摂らなければアミノ酸在庫は減る一方なのか?

絶食するとアミノ酸在庫はそのうちゼロになるのか?

ってことです。

結論から先に言うと、絶食してもアミノ酸在庫はゼロになりません。

その理由が、アミノ酸在庫を管理する上で重要な仕組み、タンパク質の合成と分解です。(図3)

「合成」ではタンパク質を作るために、アミノ酸を消費し、
「分解」では身体のタンパク質をバラバラに壊して、アミノ酸在庫を増やします。

僕らの身体はこのタンパク質の合成と分解の両方を一定のスピードで行っています。
スイッチのオン・オフのように切り替えているのではなくて、
常に両方の工場を動かしている感じです。

普段はこの合成と分解の工場は同じくらいの割合で動いているのですが、
食事でアミノ酸プールの在庫量が増えると、
在庫を消費するために合成の工場をたくさん動かすことで在庫数を減らします

また、糖質補充などのためにアミノ酸が消費され在庫が少なくなると、
タンパク質を分解してアミノ酸在庫を増やそうとします。

空腹状態でいると筋肉が減るといわれているのはこういった理由だったりします。

このようにアミノ酸プール内の在庫が一定になるような仕組みも身体には備わっており、
長期間絶食したとしてもアミノ酸在庫が0になることはありません。

筋肉をつけるためにはどうすればいいか?

アスリートに取っては筋肉の分解と合成についてが最も気になるところでしょう。

すでにタンパク質の合成と分解のバランスは常に一定になっていることを説明しました。
筋肉もタンパク質ですから絶えず合成と分解を繰り返しています。

筋肉をつけるためには、この合成と分解のバランスを合成の方が多いようにしてあげればよいんです。

そのためには筋肉合成を強くするための行動をとり、分解を強くする行動を避けることが重要です。

【合成を強くする行動】
・運動刺激(運動後48時間まで持続する)
・タンパク質の摂取

【分解を強くする行動】
・運動刺激(運動後24時間まで持続する)
・空腹状態

ん?って思ったかもしれませんが、運動刺激は筋肉の分解と合成の両方を強くさせます
合成の方が分解よりも長い時間持続しますが、運動のみでは効率が悪くなってしまいます。

しかも運動刺激に空腹状態が合わさるとトータルで分解の方が強くなってしまうので、
せっかくのトレーニングの効果が台無しになってしまいます。

それを回避するためにはどうすればいいのか?

そこで重要なのがやはり食事です。
タンパク質豊富な食事を摂ることで、筋肉の合成を強くするだけでなく、
空腹を避けられるので筋肉の分解も抑えられます。

筋肉のためには運動だけじゃなくてタンパク質の摂取も必要であることを覚えておきましょう。

まとめ

図4_本記事のまとめ

身体の中のアミノ酸がどういった動きをしているのか、理解できたでしょうか?

今回のまとめは以下です。

・アミノ酸はアミノ酸プールという倉庫で在庫数が一定になるように管理がされている。
・アミノ酸の在庫は、糖質や脂質、エネルギーなどいろいろな物質に変えられる。
・タンパク質の合成と分解によってアミノ酸プールの在庫数は一定に保たれている。
・筋肉をつけるためには、タンパク質の合成と分解の釣り合いを合成の方に傾けさせることが大切。

タンパク質は筋肉だけじゃなくていろんな動きをするんだなぁっていうイメージをもっておいてください。

そして今回の記事をよんで、じゃあタンパク質豊富な食事をしっかりとろう!と思った方、
「豊富なタンパク質ってどれくらい?」
「どのタイミングでとればいいのか?」
などなど、いろんな疑問が湧いてきたかと思いますがご安心を。

次の記事から、筋肉合成を高めるためのタンパク質摂取量やそのタイミングについて解説していきます。

トライアスリート管理栄養士 TD

【おまけ】

アミノ酸はエネルギー源にもなることを解説しました。

よく運動中のエネルギー源としてBCAAを補給できる補給食が売られています。
これはBCAAがほかのアミノ酸よりも、筋肉のエネルギー源になりやすいアミノ酸だからなんです。

吸収されたアミノ酸は全身をめぐりますが、内臓ごとにアミノ酸を使う割合は異なっていて、中でも肝臓ではより多くのアミノ酸が代謝されます。

ただBCAAは特別で、肝臓よりも筋肉の中で多く代謝されるため、より筋肉のエネルギー源になりやすいアミノ酸といわれています。

また、BCAAは消化を必要としないので、運動中でもスムーズ吸収できます。

運動中の補給としてBCAAを摂ることはとても理にかなっていることなんですねー

コメント

タイトルとURLをコピーしました